「がん情報サービス」によると、乳がんの罹患数(1年間に“新たに”乳がんと診断される人の数)は7万人を優に超えており、女性のがんの中で断トツになっているそうです。
そして、2015年の年間死亡数は1万3584人(5位)に上るそうで、乳がんは、罹患数、死亡数ともに一貫して増加傾向にある、要注意のがんと言えます。さらに乳がんは、がんの中でも少し変わった一面を持っているそうです。
今日は、そんな乳がんが持つ3つのリスクについて、医学博士の近藤慎太郎さんの著書、「医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方」をもとに、ご紹介したいと思います。
◆女性の大敵「乳がん」、あなたは大丈夫?
通常、がんのリスクは加齢とともに上昇するのだそうですが、乳がんの場合、40代後半でいったんピークを迎え、その後60代後半から減少し始めるのだそうです。
これは、女性ホルモンが乳がんの発症を促進する方向に働くためので、加齢によって閉経するとむしろリスクが減少していくからです。

(国立がん研究センターがん対策情報センター資料より一部改変)
男性が乳がんにかかることもありますが、乳がんは圧倒的に女性に多い病気で、そして、一般的にがんのリスクが低いはずの30〜40代という比較的若い世代であっても、乳がんを発症するケースはまれではないそうです。小さい子どもがいる場合も多いので、若年発症は本当に深刻な問題と言えます。
◆乳がんのリスク因子には何がある?
女性の場合、閉経前後にホルモンバランスが変化するので、リスク因子の強さは流動的で複雑なのだそうですが、ここでは分かりやすくするために、簡略化してご紹介します。

乳がんのリスクは3グループ
乳がんのリスクは三つのグループに分けられるそうです。グループ1は「生活習慣」で、乳がんでは数少ない、自分でコントロールが可能な部分です。運動やアルコール摂取などが関わってくるそうです。グループ2は「個人の体質」で、中でも乳がんの家族歴は影響力の強い因子だそうです。
そしてグループ3は、「子育て」に関するもので、この因子は、現在日本が置かれている状況のために、影響力が高まり続けている「少子化」によるものだそうです。
日本の女性の未婚化、晩婚化は増加の一途にあるのは間違いないそうで、、それに伴って出産経験や授乳機会が減り続けています。乳がんが増加する背景には、女性のアルコール摂取量の増大や食生活の欧米化など、複数の因子が関与していますが、少子化の影響も相当大きいということです。
少子化というと、どうしても社会保障や国際競争力の弱体化など、社会的な側面が先にクローズアップされますが、女性の体に与える影響についても、私たちはもっと意識的であるべきだと、近藤さんは述べておられます。
◆検診を受けても乳がんを見逃されることがある
冒頭でもご紹介した通り、乳がんは加齢とともにリスクが減る数少ないがんの一つなので、この点は、がん検診の必要性を考える上でプラスに働く、とても重要なポイントだそうです。
一般論としては、高齢になるほど、がん検診を受ける意義は減っていきます。検診で、寿命に関係しないがんが見つかることもありますが、かなりの高齢であれば、がんを見つけたとしても手術などの治療に体が耐えられない可能性もあるので、がんがあるのは絶対に許せないという人以外は、目を皿のようにしてがんを探す必要はないと言えます。
でも、乳がんの場合は話が別だそうです。乳がんは、40代後半でいったんピークを迎え、その後60代後半から減少し始めます。
若い女性ががんで命を落とすのは、本人はもとより、その家族にとっても何としても避けたいことですし、さらには少子化にあえぐ日本にとっても、甚大な損失です。
ですから、若い世代の女性の健康を守るために、乳がん検診を積極的に行うことには異論が出にくいと言えますし、その要注意期間も40〜60代と比較的短い間で済みます。その期間に医療資源を集中的に投下したとしても、十分に許容されると思われます。
ただし、その際に前提になるのは、採用しているがん検診が「方法として適切なのか」という問題があるそうで、ここが近年、若干揺らいでいるのだそうです。
どういうことかと言うと、乳がん検診を受けていたにもかかわらず、乳がんを早期の段階で見つけることができなかったというケースが見受けられるのだそうで、本当に乳がん検診に意味があるのか、という問題提起がなされ始めているそうです。
◆現状で乳がん検診に足りないものと、今後の方向性
現在、乳がん検診として行われている主な画像検査はマンモグラフィーです。マンモグラフィーは、機械で乳房を挟み込み、レントゲンを当てることによって乳がんの有無を診断するという検査です。簡便で比較的安価だし、世の中に広く普及していて、蓄積されているデータも豊富なのは間違いありません。
そして検査することにより、乳がんの死亡率を減らすというエビデンス(科学的な証拠)があるのは、現状ではマンモグラフィーだけだそうで、そのため自治体の健診ではマンモグラフィー以外は原則的に認められていないということです。
ただし、これは必ずしもマンモグラフィーがベストだということを意味しているわけではなくて、残念ながらいくつかの弱点があるということです。
まず、乳房を強く挟み込んで検査をするので、時に強い痛みが生じます。検査が不快であれば定期的に受けようというモチベーションが下がってしまいます。この点は、健康な人が自発的に受けるというがん検診の性質上、一つのマイナスと言えます。
次に医療被曝(ひばく)をするということが上げられます。被曝量は決して多くはないので、原則的には問題にならないそうですが、ただし一つだけ注意点があるそうです。それは、BRCA1/2遺伝子変異を持つ人たちに対してです。この乳がんのリスクが非常に高いグループに関しては、マンモグラフィーによる被曝が発がんを助長する可能性があるのだそうです。
そのため、30歳未満の場合は避けるべきと報告されているそうです。自治体の健診で乳がん検診の対象が30歳未満となることはないそうですが、仮にあなたが30歳以上でも、近親者に乳がんにかかった人がいる場合は、検査を担当する医療者にきちんと伝えるようにして下さいということです。
いかがですか?
私はもう閉経したので乳がん検診は受けてませんが、30〜40代の方は多少リスクはあっても、乳がん検診を受けた方が良さそうですね。
次回は、このマンモグラフィーの弱点について、詳しくご紹介したいと思います。
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