2019年05月01日

医学的効果のある入浴法、ご存知ですか?


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 私たち日本人はお風呂が大好きな民族なんだそうで、温かいお湯に毎日のように浸かる習慣をもつ国は、世界中どこを探しても日本だけだということです。各地で目にする温泉や銭湯は、日本の伝統文化として古くから我々の暮らしに根づいてきたと言えます。

 でもあなたは、お風呂の医学的効果や、正しい入り方について、深く理解できている自信がありますか? 意外とまだ広く知られていないのではないでしょうか。

 ということで今日は、およそ20年にわたり、生活習慣としての入浴を医学的に研究されてきた東京都市大学の早坂信哉教授のお話をもとに、医学的効果のある入浴法についてご紹介したいと思います。

 早坂教授によると、毎日のお風呂において正しい入浴法を実践すれば、“健康長寿”を目指せるそうです。それでは早速ご紹介します。

◆毎日の入浴習慣がある人は要介護になりにくい

 入浴と健康長寿の関係を示す例として、日本温泉気候物理医学会が実施した「入浴習慣と要介護認定者数に関する5年間の前向きコホート研究」(2011年)というのがあるそうです。

 この調査では、65歳以上の高齢者600名ほどを対象に、5年間の追跡調査を行っているそうです。高齢者を、入浴の頻度別にグループ分けし、5年後の要介護認定者数を調べました。その結果、週7回以上お風呂に浸かる習慣があるグループは、そうでないグループに比べて、自立度が1.85倍も高いという数値が出ました。つまり、毎日の入浴習慣がある人は、要介護になりにくいということです。

 また、2012年に早坂教授が行った研究では、入浴習慣と幸福度の関係が分かっているそうです。静岡県在住で20歳以上の男女3000人へのアンケート結果をもとに、彼らの入浴習慣と主観的幸福度の相関性について調べたものです。主観的幸福度というのは、自分が日々の生活でどれくらい幸せだと感じているかを、0から10までの11段階評価で回答してもらうものだそうです。すると、毎日の入浴習慣がある人のほうが、そうでない人に比べて、主観的幸福度が高いという結果が出たそうです。

 このように、毎日の入浴習慣は心身共に良い影響を与えるということが言えます。

 ただここで注意すべきなのは、入浴は、シャワーを浴びるだけの「シャワー浴」ではなく、湯船にしっかりと浸かる「浴槽浴」である必要があるということだそうです。つまり、浴槽浴にはシャワーだけでは得られないメリットが多くあるからです。

◆体のライフラインを強化する

 その医学的効果は具体的にどのようなものなのでしょうか。実は、浴槽浴が心身に与える効果としては大きく分けて3つあり、「温熱作用」、「静水圧作用」、そして「浮力」だそうです。

 この中で最も重要なのが、「温熱作用」だということです。温かいお湯に浸かることによって、まずは体の表面が温められます。次に皮膚の下まで熱が伝わり、血管の拡張が起こることで、血液の流れがよくなります。人間の細胞は、体の隅々まで張り巡らされた血管を流れる血液によって、酸素や栄養分を受け取り、二酸化炭素などの老廃物を回収してもらいます。血液の巡りがよくなるということは、いわば、体にとって一番大事なライフラインが強化されるということで、このことによって新陳代謝の活発化、免疫力、体力の向上が期待できます。

 また、体が温まることで筋肉や関節の緊張が和らぎ、肩こりや腰痛、筋肉痛が緩和されるという効果もあります。

 「温熱作用」に加え、「静水圧作用」も血液の循環に働きかけます。お湯のなかに浸かると、人間の体には水圧がかかります。この水圧は意外と侮れないもので、肩までお湯に浸かった状態で腹囲を測ってみると、空気中に比べて数センチ縮んでいることもあるほどです。この水圧が皮膚の血管にかかってくることで、血液が心臓に押し戻されることになります。また、お湯に浸かっている間に水圧で押さえつけられていた血管は、湯船から出た瞬間に開放され、血液が一気に流れ出す。この一連の働きが、血液の巡りをよくすることにつながります。

 最後の「浮力」は、主に精神面に効果をもたらします。お湯に肩まで浸かった場合、その人の体重は浮力によって10分の1になるという計算です。体が軽くなることにより、大きなリラックス効果があるのだそうです。

 以上を踏まえたうえで、健康長寿のための「正しい入浴法」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

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◆お湯が体に悪影響を及ぼす温度

 ポイントは次の3つだそうです。

(1)お湯の温度は38〜40℃
(2)肩まで浸かる全身浴
(3)入浴時間は10分間

 まず、お湯の温度についてですが、実はこの温度は、わずかな差でも、体に与える影響が正反対と言っていいほど違ってくるのだそうです。その境となるのは42℃で、お湯の温度がこれよりも高くなると、逆に体に悪影響を及ぼすそうです。

 人間の体には自律神経という神経があり、循環器、消化器、呼吸器など、生命を保つための体の働きを自律的に調整してくれています。自律神経には、体を興奮させる「交感神経」と、逆にリラックスさせる「副交感神経」の2種類があります。

 42℃以上の熱いお湯に入ると、この交感神経が刺激され、体は一種の戦闘状態に突入してしうため、血圧が上がり、脈は速くなり、逆に胃腸など内臓の働きは弱まってしまうということです。

 ですからお湯の温度を設定するときは、42℃よりも少しぬるめで、かつ体温よりも高い、38〜40℃の範囲に設定して下さい。そうすることで体も温まり、副交感神経の働きで体を十分癒すことができます。

 なお、高齢者は熱さに対する感覚が鈍くなってきて、熱いお湯を好みがちですが、自分の感覚に頼らず、あくまでこの設定温度を守って下さいということです。

 「どうしてもぬるく感じてしまい、満足できない」という人は、最初に40℃のお湯に入り、追い焚き機能を使って徐々に温度を上げ、体を熱さに慣らしてください。ただし、温度の上限は、あくまで42℃だそうです。

 次に、お湯の量ですが、浴槽にたっぷりとお湯を張って肩まで浸かる全身浴がおすすめだそうです。昨今はダイエット目的の「半身浴ブーム」もありますが、専門家の立場から見るとこれはあまり効果がないそうです。ダイエットのためには、半身浴よりもむしろ、全身浴のほうが一気にカロリーを消費できるそうです。

 全身浴の利点は、湯量が多いために、「温熱作用」と「静水圧作用」が働きやすいということです。全身がお湯に浸かるので体がよく温まり、水圧が高いので血液の巡りもよくなる。このため、肩凝りや頭痛には、半身浴よりも全身浴のほうが効果があると言われています。半身浴よりも下半身により大きな水圧がかかるため、足のむくみにも効果的です。

 そして全身浴での入浴時間は、10分間がおすすめだそうです。基本的に、40℃前後のお湯に10分ほど浸かることで、体温は約0.5〜1℃上昇します。その上昇だけで、十分に「温熱作用」は見込めるそうです。そして、いったん上昇した体温は、1〜2時間程度はそのまま持続するので、無理にお湯に浸かって体を温め続ける必要はないそうです。汗が出はじめたら、体が十分温まったというサインだということです。

 入浴時間の10分は延べ時間なので、最初に5分間入って、途中であがって体を洗い、また5分間入って出るという行程でも構わないそうです。

 ただし、心臓や肺に疾患がある人は例外で、お湯の熱や水圧が負担になるので全身浴は避けて、2、30分程度の半身浴にする必要があります。時間が長いのは、お湯の量が少ない分、体が温まるのには時間がかかるからです。

◆ヒートショックに要注意

 ただ、入浴は心身に素晴らしい効果をもたらす反面、一歩間違えると死の危険もあります。特に寒い冬に要注意なのは、高齢者の入浴時の死亡事故です。

 厚生労働省の研究班の調査(平成25年度)では、入浴中の事故死の数は、年間で約1万9000人で、交通事故で亡くなられる方は年間4000人前後なので、それと比べてもかなりの数です。

 また、その全体の死亡者数の9割を65歳以上の高齢者が占めていて、そして事故の半数が、12月から2月にかけての冬季に集中しているということです。

 亡くなられた方の症状で多いのは、脳卒中や心臓発作(心筋梗塞、不整脈など)だそうで、これらは、「ヒートショック」によって引き起こされることが多いということです。ヒートショックとは、外部の温度差によって引き起こされる血圧の急激な変化のことを言います。

 入浴の際にどうしてヒートショックが起こるのかを、ご説明します。お風呂に入る前に、冷たい脱衣所で服を脱いで裸になります。そうすると、体が寒さに驚いて交感神経が刺激され、血圧が急上昇します。次に、寒さに耐え切れず、すぐに熱いお湯にドボンと浸かった場合、今度は湯船に入った際に体が熱さに驚き、先ほどと同じように再び血圧の上昇が起こります。

 こうした一連の行動で、血圧が40ほど一気に上がるという研究データもあるそうです。このような血圧の変化によって、高齢者の弱くなった血管や心臓に大きな負担がかかり、脳卒中や心臓発作を引き起こすことになるということです。

 ですから、ヒートショックを防ぐためには、入浴の過程における温度差を少なくしていかなくてはなりません。

 まず、脱衣所に暖房器具を置き、空間を温めます。理想は、リビングとの温度差5℃以内です。例えば、リビングの温度が23℃なら、脱衣所を18℃以上にします。脱衣所を、可能であれば20℃前後の温度に保つことで、血圧の急上昇は防ぐことができるそうです。

 同様に、浴室も温めることが重要です。最近では暖房機能がついていることも多いですが、全てのお宅に備わっているわけではありません。暖房機能がない場合の方法としては、湯船にお湯を張る際に、蓋を全て開けて室内に湯気を立てることです。蒸気が充満し、サウナのような効果で浴室が温まります。

 徐々に体をお湯の温度に慣らしていくという意味で、入浴前のかけ湯も大きなポイントです。体の中心部である心臓辺りに一気にお湯をかける人がいますが、それではすぐに湯船に浸かってしまうのと同じです。ですから、手足の先、体の中心部、頭の順番で、少しずつかけ湯をしていきます。手桶で10杯ほどが目安だそうで、シャワーの場合もすぐに終えるのではなく、ある程度の時間を取る必要があります。

 また、入浴のタイミングにも注意が必要だそうです。というのも、午前中は心筋梗塞や脳卒中が起こることが多い時間帯だからです。ですから、高齢者の方は朝風呂は避けたほうが良いということです。

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◆入浴前後で最低でも500mlは水分補給を

 熱中症・脱水症で意識がなくなり、お風呂で溺死するケースも多々るそうです。頭がぼんやりしてきたり、眠気を感じたら、一度湯船から出るようにして下さいということです。

 また熱中症・脱水症予防には、入浴前後における十分な水分補給も必要だということです。温度や季節にもよりますが、お風呂で汗をかくことで体内から失われる水分量は、およそ800mlにもなるという研究データもあるそうなので、入浴前後で、最低でも合計500mlは水分補給をしておくのが理想だということです。

 水分補給におすすめなのは、ポカリスエットなどのイオン飲料で、イオン飲料には、汗をかくことで失われるナトリウムやカリウムが含まれ、体を素早く脱水から回復させる効果があるからです。

 また、「入浴後のビール1杯」が大好きな人も多いかも知れませんが、アルコールは利尿作用があり、脱水症状を引き起こしやすくなるので、入浴前後のアルコールは、量や回数を控えるようにして下さいということです。

 現代では、自宅の浴室は究極のリラクゼーション空間です。最近のお風呂グッズは充実していて、入浴剤1つにしてもかなりの種類が発売され、お風呂でスマートフォンを楽しむための防水ケースや、防水テレビもあります。1人で裸になって、心身ともに解放される浴室は、ストレスの多い現代社会では貴重な空間と言えます。

 いかがですか? こうした危険に注意して、そして健康面での工夫も取り入れながら、是非、あなただけの快適な入浴生活を楽しんで下さいね。

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posted by ケイちゃん at 17:20| Comment(0) | 温泉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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